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極めて邪悪、きわめてじゃあく、衝撃的に凶悪でしょうげきてきにきょうあくで卑劣ひれつ

Trailer

    1970年代アメリカ、30人以上の美しい女性ばかりを惨殺したとされるテッド・バンディ。

    IQ160の頭脳と美しい容姿で、司法・メディアを翻弄し、”シリアルキラー”の語源になった稀代の殺人鬼。その余罪はいまなお謎に包まれており、本当の被害者の数は誰も知らない。3度死刑判決を受けるが、無罪を主張。ついには自らが弁護人となり法廷で徹底抗弁を繰り広げ、その裁判の模様はTVで生中継されるなど、全米の注目を浴びた。本作では、世界を震撼させたシリアルキラーの裏側へ迫ると共に、バンディの長年の恋人の視点を通し善人としての姿を描き、観客を予測不可能な迷宮に誘い込んでいく。

    主演は、今までの“爽やかアイドル”系イメージを完全脱却し、演技派俳優としての評価を一気に高めているザック・エフロン(『グレイテスト・ショーマン』)。テッド・バンディを愛してしまったヒロインにリリー・コリンズ(『あと1センチの恋』)、判事役に名優ジョン・マルコヴィッチ(『RED/レッド』シリーズ)など豪華キャストが充実の演技を見せる。

    監督はドキュメンタリーの分野で高い評価を受けるジョー・バリンジャー。記録映像やインタビューなどを通してバンディに迫ったNetflixオリジナル作品『殺人鬼との対談:テッド・バンディの場合』でも監督を務め、劇映画とドキュメンタリーシリーズ、両方のスタイルで“悪のカリスマ”とも評される人物を徹底的に掘り下げていく試みに成功している。

    Who is Ted Bundy?

    連続殺人犯のイメージを覆す、ルックス・知性・カリスマ性

    ワシントン州時代は名門ワシントン大学に、また、ユタ州時代はユタ大学ロースクールに在籍。IQ160の頭脳があったと言われ、雄弁な振る舞いにメディアの関心が集まった。

    実際の犯行では、身体が不自由だと装った上で、荷物を車に乗せるのを手伝ってほしいと女性に近づき、バールなどで頭を殴り、気絶させた後に拉致。その美しい容姿と魅力的で冷静な彼の言葉にほとんどの女性が何も疑わずに車に乗り込んでしまったのだ。女性からすれば恐怖でしかないはずだが、一方で女性たちを魅了し、刑務所にはテッド・バンディ親衛隊として知られる女性たちから、連日多くのファンレターが届いた。

    きわめて猟奇的で残虐でありながら、一切の証拠を残さない完璧すぎる犯行手口

    遺体は人目につかない山中に遺棄し、手際よく自分の痕跡を消し去った。裁判においても彼を有罪にするための決定的証拠は弱かったが、最終的には、FBIの科学捜査研究所が、車の中から被害者の毛髪と「ほぼ同じ」毛髪を発見。被害者の臀部についていたバンディの噛みあとの歯形が証拠となり、死刑が宣告された。しかし、現在の裁判でこれらの証拠が死刑の裏付けになるほど強力かといえば、そうではない。コロラド州で殺害したキャリン・キャンベル事件では、無罪を勝ち取れる可能性も大きかったといわれている。

    アメリカの警察情報管理システムを変革させるほどの、強力なインパクト

    テッド・バンディの事件によって、アメリカの警察情報管理システムは大きく変わった。アメリカの警察は、日本の警察のように中央集権的な制度で作られているのでなく、自治体ごとに作られている。その最大の欠点は、犯人が警察の管轄を越えて移動してしまうと追跡が困難になってしまうということ。テッド・バンディは、州を横断し犯行に及んだため、検挙に時間を要したのだ。バンディ事件後は、各地の警察組織が情報共有・分析を行い、類似の手口の犯人が異なった地域で活動していないかを調査するというシステムが作られた。プロファイリングを作り出した重要な契機の一つとなったのである。

    解説:越智啓太(法政大学・犯罪心理学)