予告

作品情報
直木賞作家・白石一文作品
初の映画化
本作は、09年「この胸に深々と突き刺さる矢を抜け」で山本周五郎賞、10年「ほかならぬ人へ」で直木賞を受賞し、幅広い世代から絶大な支持を得る白石一文による著作の初の映画化となる。
映画化を快諾したという白石氏は、「『赫い髪の女』や『遠雷』の頃から荒井晴彦さんの脚本に魅せられてきた者のひとりとして、その荒井さんから映画化の話をいただき、一も二もなくすべてをお任せすることにした。しかも今回は自らメガホンを握って下さるという。原作者としてこれに優る光栄はない映画界の伝説ともいうべき荒井晴彦さんの手で、その光がよりなまなましく、妖しく観る者の心を照らし、身の内に眠っていた“おとこ”や“おんな”が強く喚起されんことを切に願っている。」と語り、映画化へ向けて期待の言葉を寄せている。
『ヴァイブレータ』『共喰い』 『海を感じる時』 日本を代表する脚本家・荒井晴彦監督作
数々の作品で、男と女のエロティシズムを表現し、キネマ旬報脚本賞に5度輝く、日本を代表する脚本家・荒井晴彦。本作は、『身も心も』、『この国の空』に続き、脚本・監督に挑んだ渾身の一作。「死とエロスが匂いたち、相米慎二監督も惚れ込んだという秋田の西馬音内盆踊りと、男女の恋を絡めた映画を作りたかった」と語り、物語の舞台を福岡から秋田へ変更し、全編秋田ロケを敢行。また、写真家・野村佐紀子によるモノクロームの写真の数々によって、主人公のふたりの過去を鮮やかに蘇り、映画ならではの抒情的な世界観を作り上げることに成功した。さらに、登場人物たちの感情を代弁するかのような下田逸郎によるメロディアスな楽曲が、男と女の深淵へと迫る物語へと見事に昇華させている。
柄本佑・瀧内公美 ふたりだけの日常、ふたりだけの会話、 ふたりの身体の言い分
主演を務めたのは、『きみの鳥はうたえる』などで数々の賞を受賞し、今日本映画界で欠かせない存在となった実力派俳優・柄本佑と、廣木隆一監督の『彼女の人生は間違いじゃない』での演技が評価され、活躍の場を広げている新鋭・瀧内公美。出演者はこの2人のみ。数年ぶりの再会をきっかけに、抑えきれない衝動の深みにはまっていく危うい関係を、大胆かつ濃密に演じきった。
他愛のない会話、食事、セックスを繰り返し、「身体の言い分」に身を委ねるふたりの日常の中の性愛。
「世界が終わるとき、誰と何をして過ごすか?」という究極の問いを、観る者に突きつける<R18>衝撃作が誕生した。
物
語
十日後に結婚式を控えた直子は、故郷の秋田に帰省した昔の恋人・賢治と久しぶりの再会を果たす。
新しい生活のため片づけていた荷物の中から直子が取り出した1冊のアルバム。
そこには一糸纏わぬふたりの姿が、モノクロームの写真に映し出されていた。
蘇ってくるのは、ただ欲望のままに生きていた青春の日々。
「今夜だけ、あの頃に戻ってみない?」
直子の婚約者が戻るまでの五日間。
身体に刻まれた快楽の記憶と葛藤の果てに、ふたりが辿り着いた先は―。

荒井:東日本大震災が起きて、翌年の2012年にはもう原作は発行されていますよね。当時、いろんな新聞に書評が出ているのを見たのと、同業者の小川智子から勧められて原作を読んだのですが、興味をひかれたのは、日本が終ってしまいそうな時に、「身体の言い分」に身を委ねる二人がアナーキーでいいなと思いました。世間的な価値観や倫理じゃなくて、身体がしたい事をさせてあげようという。“自然災害=超自然”に対して、“人間の自然”で対峙しようという事ですよね。
白石:映画を観た直後の感想としては、「身体の言い分」という点に荒井さんはテーマを強く絞り込んでおられるんだなと感じましたね。そこが、とても鮮やかで原作者の僕でもハッとさせられるものを感じた。劇中、賢治と直子が二人で寝ていて、昔の話をするところがありますよね。あの場面なんてジーンとしてしまった。自分の作品のキモを一発で言い当てられたような気がしました。ところで、荒井さんはどうして今回、脚本だけじゃなく、監督までしようと思ったんでしょうか?
荒井:登場人物が二人くらいなら監督できるかなと。ただ、年齢の設定は、白石さんが書いていたよりも、大分、若くなった。白石さんの原作では賢治は40前後、直子は30代半ばですよね?当初、その年代の俳優をずっと探してはいたんですけど。ただ、主演の二人が若くなった分、ちょっと明るい軽い感じになって青春映画になったようにも思いましたね。




荒井:東日本大震災が起きて、翌年の2012年にはもう原作は発行されていますよね。当時、いろんな新聞に書評が出ているのを見たのと、同業者の小川智子から勧められて原作を読んだのですが、興味をひかれたのは、日本が終ってしまいそうな時に、「身体の言い分」に身を委ねる二人がアナーキーでいいなと思いました。世間的な価値観や倫理じゃなくて、身体がしたい事をさせてあげようという。“自然災害=超自然”に対して、“人間の自然”で対峙しようという事ですよね。
白石:映画を観た直後の感想としては、「身体の言い分」という点に荒井さんはテーマを強く絞り込んでおられるんだなと感じましたね。そこが、とても鮮やかで原作者の僕でもハッとさせられるものを感じた。劇中、賢治と直子が二人で寝ていて、昔の話をするところがありますよね。あの場面なんてジーンとしてしまった。自分の作品のキモを一発で言い当てられたような気がしました。ところで、荒井さんはどうして今回、脚本だけじゃなく、監督までしようと思ったんでしょうか?
荒井:登場人物が二人くらいなら監督できるかなと。ただ、年齢の設定は、白石さんが書いていたよりも、大分、若くなった。白石さんの原作では賢治は40前後、直子は30代半ばですよね?当初、その年代の俳優をずっと探してはいたんですけど。ただ、主演の二人が若くなった分、ちょっと明るい軽い感じになって青春映画になったようにも思いましたね。

白石:それは僕も感じましたね。これを書いたとき、自分は結構な年齢で、セックスに対する興味もずいぶん薄れてしまっていたんです。若い人の欲望や衝動は分からない気がしていた。でも、映画を見て、小説ももう少し若い設定でもよかったのかもしれないと思いましたね。瀧内さんと柄本さんだから、賢治と直子のやり取りもエネルギッシュにもなりましたね。そもそも原作はほとんどセックスシーンだけだから、よく、映画化してもらったなと思います。執筆していた時期は原発事故が生々しく、誰もが大きな不安を抱えていた。たとえばもっと原発に近い場所に住んでいて、自分がもう少し若かったら一体どうするだろうと考えました。人がたくさん亡くなったり故郷を追われるような事態に向き合うと、作家として何か書かなきゃいけない。ただ、そこで嘘はやっぱり書けない。できるだけ嘘を排した物語を探す過程で、人は大きな世界が壊れた時、小さな世界の中に生きる道を見つめるしかないと思うわけです。直子と賢治は二人だけの小さな世界に閉じこもり、男女である以上は当然身体の関係が伴うので、嘘のつけない宇宙の中に放り込まれるんじゃないか。そこには快感もあるし、持っている特質も表に出るんだろうな、と。そしてそうした小さな宇宙の中に潜んだときに人間は初めて本当のしぶとさを発揮するような気がしたんですね。
荒井:だから原作と出会ってからずっと、早く撮りたいと言っていたんですよ。東日本大震災の後、日本のあちこちで噴火も起きて、地震も起きて、自然災害という非日常的な、それは戦争という言葉にも置き換えられるけど、そういう理不尽な状況に対して、気持ちいいって言葉をぶつけたかったんですね。こんな緊急事態にセックスばっかりしている。それはアンモラルなことで、考えようではとんでもないことなんだけど、そういう風に作って、やってみたいなと思ったんです。





荒井:前回、監督した『この国の空』でもそうだけど、背景には戦争という大きなことがあるけれど、それよりも自分と自分の好きな男の問題の方が大きい、僕はそれでいいんだよ、と。みんながそうなれば戦争もできない。世の中の事に全部、背を向けろということになるかもしれないけど、だからこそ、白石さんの“身体の言い分”という言葉の発見はすごいなと思う。理性か、身体かと自問自答した際、身体の言い分を聞こうよというのは革命的な意見だと思うんですよ。それを抑えろとするのが世の中がだから。
白石:僕は男なので、これは幻想かもしれないけど、何か困ったら、女の人のところに逃げればいいといつも思っているんです。セックスに限らず、女性の中には何でも入れるような気がして、防空壕、逃げ場所なんです。だから拒絶されると終わりで、失望しかないんですけど、でも、本当に困ったとき、大変なとき男はどこか別の場所に逃げるのではなく女の人の中に逃げなさいと言いたい。逃げるのって難しいんです。逃げる体力があるときは逃げないし、体力がなくなってから逃げようとするとすぐ息が切れちゃう。今の男性はそういう点でトランプのスペードのエースを使ってないような気がする。それを使っていいんだよと、それだけは是非伝えたいですね。
インタビュアー:金原由佳


荒井:前回、監督した『この国の空』でもそうだけど、背景には戦争という大きなことがあるけれど、それよりも自分と自分の好きな男の問題の方が大きい、僕はそれでいいんだよ、と。みんながそうなれば戦争もできない。世の中の事に全部、背を向けろということになるかもしれないけど、だからこそ、白石さんの“身体の言い分”という言葉の発見はすごいなと思う。理性か、身体かと自問自答した際、身体の言い分を聞こうよというのは革命的な意見だと思うんですよ。それを抑えろとするのが世の中がだから。
白石:僕は男なので、これは幻想かもしれないけど、何か困ったら、女の人のところに逃げればいいといつも思っているんです。セックスに限らず、女性の中には何でも入れるような気がして、防空壕、逃げ場所なんです。だから拒絶されると終わりで、失望しかないんですけど、でも、本当に困ったとき、大変なとき男はどこか別の場所に逃げるのではなく女の人の中に逃げなさいと言いたい。逃げるのって難しいんです。逃げる体力があるときは逃げないし、体力がなくなってから逃げようとするとすぐ息が切れちゃう。今の男性はそういう点でトランプのスペードのエースを使ってないような気がする。それを使っていいんだよと、それだけは是非伝えたいですね。
インタビュアー:金原由佳

永原賢治役柄本 佑
1986年生まれ、東京都出身。
2001年、黒木和雄監督の『美しい夏キリシマ』の主人公康夫役を演じ、数々の映画新人賞を受賞。以後、様々な映画で鮮烈な印象を残し続け第一線で活躍。主な出演映画は『真夜中の弥次さん喜多さん』(05/宮藤官九郎監督) 『十七歳の風景 少年は何を見たのか』(05/若松孝二監督)、『疾走』(05/SABU監督)、『犯人に告ぐ』(07/瀧本智行監督)、『グミ・チョコレート・パイン』(07/ケラリーノ・サンドロヴッッチ監督)、『空気人形』(09/是枝裕和監督)、『まほろ駅前多田便利軒』(11/大森立嗣監督)、『横道世之介』(13/沖田修一監督)、『フィギュアなあなた』(13/石井隆監督)、『今日子と修一の場合』(13/奥田瑛二監督)、『GONINサーガ』(15/石井隆監督)、『追憶』(17/降旗康男監督)、『素敵なダイナマイトスキャンダル』(18/冨永昌敬監督)、『きみの鳥はうたえる』(18/三宅唱監督) 『ポルトの恋人たち 時の記憶』(18/舩橋淳監督)など。公開待機作に、『ねことじいちゃん』(19/岩合光昭監督)、『居眠り磐音』(19/本木克英監督)、『アルキメデスの大戦』(19/山崎貴監督)などがある。
佐藤直子役瀧内公美
1989年生まれ、富山県出身。
2012年、本格的に女優としての活動を開始。半年後、オーディションにて映画『グレイトフルデッド』(14/内田英治監督)の主演を射止める。2015年には白石和彌監督『日本で一番悪い奴ら』にて、打算的な若手婦警役を好演。2017年、廣木隆一監督『彼女の人生は間違いじゃない』の主人公 金沢みゆき役を演じ、第27回日本映画プロフェッショナル大賞新人女優賞、2017年度全国映連賞女優賞を受賞。第42回報知映画賞主演女優賞ノミネート、第72回毎日映画コンクール主演女優賞ノミネート、など高い評価を得る。その他、主な出演映画に『さよなら渓谷』(13/大森立嗣監督)、『ソレダケ/that’s it』(15/石井岳龍監督)、『闇金ウシジマくん Part3』(16/山口雅俊監督)、『ここは退屈迎えに来て』(18/廣木隆一監督)など。2019年1月19日(土)よりNHK『ゾンビが来たから人生見つめ直した件』(全8回)に出演。2月8日(金)公開のオムニバス映画『21世紀の女の子』では、竹内里紗監督作品『Mirror』で主演を務める。
出演:柄本 佑 瀧内公美
脚本・監督:荒井晴彦 原作:白石一文「火口のふたり」(河出文庫刊)
音楽:下田逸郎 製作:瀬井哲也 小西啓介 梅川治男 エグゼクティブプロデューサー:岡本東郎 森重 晃
プロデューサー:田辺隆史 行実 良 企画:寺脇 研 企画協力:㈱河出書房新社
撮影:川上皓市 照明:川井 稔 渡辺昌 録音:深田 晃 装飾:髙桑道明 衣装:小川久美子
美粧:永江三千子 編集:洲﨑千恵子 音響効果:齋藤昌利 制作担当:東 克治 助監督:竹田正明
写真:野村佐紀子 絵:蜷川みほ タイトル:野口覚
特別協力:あきた十文字映画祭実行委員会 よこてフィルムコミッション 秋田フィルムコミッション研究会
製作:「火口のふたり」製作委員会 制作プロダクション:ステューディオスリー 配給:ファントム・フィルム
全国大ヒット公開中