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Interview with the director

堀江貴大監督インタビュー

Q:「夫の不倫を題材に、妻が漫画で描く」という設定で映画を作ろうと思われたきっかけは?

自身が結婚したこともあり、夫婦モノを作ることに興味を持ち始めたタイミングでした。たまたまコンビニで立ち読みした雑誌でも「不倫」をテーマにしたマンガの特集がされていて、不倫モノは夫婦モノの一種だと思ったんです。この企画を立ち上げる時に、「1122」(渡辺ペコ)や「ホリデイラブ~夫婦感恋愛~」(こやまゆかり)などを読みましたね。個人的には「うきわ」(野村宗弘)という作品も好きでした。不倫=どろどろしたものという印象が強い中で、自分が手掛けるなら、シリアスだがコメディ色もある不倫ノを描きたいと思っていたんです。そこで以前からやってみたかった自動車教習所の先生と妻が逃避行するストーリーに「復讐」というテーマを織り交ぜていきました。

インタビュー1

Q:TSUTAYA CREATORS‘ PROGRAM FILMに出した企画をどのようにブラッシュアップしていったのか?

主人公たちの年齢を自分と同じ年代にするために少し若くしただけで、応募した企画から大幅な変更はしていないんです。不倫=悪という教訓話を作りたいわけではなく、「夫婦の攻防戦」を見せたい、俊夫にも同情できるようにみせたいという思いがありました。俊夫に感情移入する人、佐和子に「もっとやれ!」と応援する人、どちらの視点でも楽しめるつくりは意識したつもりです。企画から脚本に落とし込む作業が難しかったんですが、初稿の88%ぐらいはそのまま生かされています。漫画と実写を行ったり来たりする構成をどう映像化するか、そこに一番時間を掛けました。

インタビュー2

インタビュー3

Q:キャスティングについて

黒木華さんは、『リップヴァンウィンクルの花嫁』(16/岩井俊二監督)のように現実世界のどこかで生きていそうな人間をすごくリアルに演じられる一方で、「重版出来!」(16/TBS)、「凪のお暇」(19/TBS)など振り切ったキャラクターのお芝居もできる器用な方という印象。今回は、「こういう女性いるな」と観客が実感できて、地に足の着いたキャラクターにきちんと見せたく黒木さんにオファーしました。佐和子という役を終始無表情で、漫画の世界でだけでは感情が露になるという設定も考えたんですが、それだと観客は佐和子=どこか不気味 という先入観を与えてしまうと思い、黒木さんのもつキュートさを意識したキャラクターづくりに変更しました。俊夫にはどこか情けない感じを出したかったので、チャーミングでかつユーモラスな表現もできる方という人選で柄本佑さんにお願いしました。話題になった「知らなくていいコト」(20/NTV)の「尾高」のような役はもちろん素敵ですが、僕は「喜劇役者」としての柄本さんがすごく好きで。ご本人が喜劇をお好きで沢山ご覧になっているということも知っていたので、その点もとても大きいですね。おふたりとも役へのアプローチが違うのも、とても面白かったですね。柄本さんは段取りと本番ではニュアンスの異なる自由なお芝居を、黒木さんは同じ芝居を何度も新鮮に演じることができて、素晴らしい役者さんたちだと思いました。

インタビュー4

インタビュー5

Q脇を固める人物も魅力的ですが・・・

先生役の金子大地さんは、瞳の揺れ方が特徴的。佐和子の漫画の中に出てくるキャラクターという抽象化された存在に人間味を持たせる上で、視線や瞳の動かし方が重要だと思っていたんです。ドラマ「腐女子、うっかりゲイに告る」(19/NHK)での演技も印象的でした。佐和子の担当編集者であり、俊夫の不倫相手でもある千佳役は、爽やかであっけらかんとした雰囲気をもつ奈緒さんなら、「爽やかな不倫モノ」にぴったりの「不倫相手」を演じられるのではと思いぴったりでしたね。千佳という女性の面白いところは、編集者として漫画愛ゆえの行動をしていて、この漫画の完成を観たいからこそ、不倫を止めずに連載に持っていこうとしているところ。俊夫と不倫が「性愛」じゃないという点も「不倫モノ」として、新しいものになったかなと思います。風吹ジュンさんは、『無能の人』(91/竹中直人監督)が好きで、当初から母親役にキャスティングしたいと考えていました。田舎町の暮らしを自分のペースで楽しんでいる感じも、いい空気感で作れたと思います。

Q:演出で特に意識した点は?

俊夫に関しては、苦しめば苦しむほど、滑稽な雰囲気になって欲しいと思っていました。本人的にはシリアスな状況になっているのに、傍から見るとその姿がおもしろく見せたいと、撮影前に柄本さんと話しました。佐和子の実家の居間で俊夫が意外な場所に座ったり、佐和子の原稿を盗み読みして驚くシーンで、柄本さんから「こうやってみたい」とお芝居を提案してくれることも多かったですね。俊夫が車で佐和子の運転する教習車を追いかけるシーンで意識したのは、アルフレッド・ヒッチコック監督の『めまい』(58)。手に汗握るというよりは、ダラダラとしたチェイスシーンを撮りたかったんです。そのほかにも、『スイミング・プール』(04/フランソワ・オゾン監督)、『ゴーン・ガール』(14/デヴィッド・フィンチャー監督)、『ノクターナル・アニマルズ』(17/トム・フォード監督)や谷崎潤一郎の小説「鍵」などを参考に、視点を操作してどう物語を動かしていくのかがよいか、重点的に考えました。
マンガのネームで描かれている内容の実写パートの撮影時には、夫の俊夫に見せる顔とは違う部分、印象を覗かせてもらうことを意識し、黒木さんの声のトーンを上げ、佐和子の行動を少し積極的に見せるなどニュアンスを加えました。
俊夫と千佳のキスシーンは一転集中です。はったりを込めて大仰なカメラワークで撮影をしたかった。ブライアン・デ・パルマ監督作品のような(笑)

インタビュー6

Q:観客へのメッセージ

素晴らしいスタッフキャストの皆さんの力が合わさって、虚実入り混じるミステリアスな夫婦映画が完成しました!“佐和子”という底が知れない人間を、黒木華さんがキュートさとクールさという二面性を持って繊細に表現し、物悲しくも恐ろしくもあるキャラクターが誕生しました。そして、恐怖と嫉妬にもだえ苦しむ“俊夫”という人間を、柄本佑さんが時にカッコ良く、時にカッコ悪く、愛嬌たっぷりに演じてくれました。この漫画家夫婦の一風変わった夫婦喧嘩の行き着く先はどこなのか。ニヤニヤヒヤヒヤしながら、楽しんでご覧いただきたいです!

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Interview with the director

堀江貴大監督インタビュー

Q:「夫の不倫を題材に、妻が漫画で描く」という設定で映画を作ろうと思われたきっかけは?

自身が結婚したこともあり、夫婦モノを作ることに興味を持ち始めたタイミングでした。たまたまコンビニで立ち読みした雑誌でも「不倫」をテーマにしたマンガの特集がされていて、不倫モノは夫婦モノの一種だと思ったんです。この企画を立ち上げる時に、「1122」(渡辺ペコ)や「ホリデイラブ~夫婦感恋愛~」(こやまゆかり)などを読みましたね。個人的には「うきわ」(野村宗弘)という作品も好きでした。不倫=どろどろしたものという印象が強い中で、自分が手掛けるなら、シリアスだがコメディ色もある不倫ノを描きたいと思っていたんです。そこで以前からやってみたかった自動車教習所の先生と妻が逃避行するストーリーに「復讐」というテーマを織り交ぜていきました。

インタビュー1

Q:TSUTAYA CREATORS‘ PROGRAM FILMに出した企画をどのようにブラッシュアップしていったのか?

主人公たちの年齢を自分と同じ年代にするために少し若くしただけで、応募した企画から大幅な変更はしていないんです。不倫=悪という教訓話を作りたいわけではなく、「夫婦の攻防戦」を見せたい、俊夫にも同情できるようにみせたいという思いがありました。俊夫に感情移入する人、佐和子に「もっとやれ!」と応援する人、どちらの視点でも楽しめるつくりは意識したつもりです。企画から脚本に落とし込む作業が難しかったんですが、初稿の88%ぐらいはそのまま生かされています。漫画と実写を行ったり来たりする構成をどう映像化するか、そこに一番時間を掛けました。

インタビュー2

インタビュー3

Q:キャスティングについて

黒木華さんは、『リップヴァンウィンクルの花嫁』(16/岩井俊二監督)のように現実世界のどこかで生きていそうな人間をすごくリアルに演じられる一方で、「重版出来!」(16/TBS)、「凪のお暇」(19/TBS)など振り切ったキャラクターのお芝居もできる器用な方という印象。今回は、「こういう女性いるな」と観客が実感できて、地に足の着いたキャラクターにきちんと見せたく黒木さんにオファーしました。佐和子という役を終始無表情で、漫画の世界でだけでは感情が露になるという設定も考えたんですが、それだと観客は佐和子=どこか不気味 という先入観を与えてしまうと思い、黒木さんのもつキュートさを意識したキャラクターづくりに変更しました。俊夫にはどこか情けない感じを出したかったので、チャーミングでかつユーモラスな表現もできる方という人選で柄本佑さんにお願いしました。話題になった「知らなくていいコト」(20/NTV)の「尾高」のような役はもちろん素敵ですが、僕は「喜劇役者」としての柄本さんがすごく好きで。ご本人が喜劇をお好きで沢山ご覧になっているということも知っていたので、その点もとても大きいですね。おふたりとも役へのアプローチが違うのも、とても面白かったですね。柄本さんは段取りと本番ではニュアンスの異なる自由なお芝居を、黒木さんは同じ芝居を何度も新鮮に演じることができて、素晴らしい役者さんたちだと思いました。

インタビュー4

インタビュー5

Q脇を固める人物も魅力的ですが・・・

先生役の金子大地さんは、瞳の揺れ方が特徴的。佐和子の漫画の中に出てくるキャラクターという抽象化された存在に人間味を持たせる上で、視線や瞳の動かし方が重要だと思っていたんです。ドラマ「腐女子、うっかりゲイに告る」(19/NHK)での演技も印象的でした。佐和子の担当編集者であり、俊夫の不倫相手でもある千佳役は、爽やかであっけらかんとした雰囲気をもつ奈緒さんなら、「爽やかな不倫モノ」にぴったりの「不倫相手」を演じられるのではと思いぴったりでしたね。千佳という女性の面白いところは、編集者として漫画愛ゆえの行動をしていて、この漫画の完成を観たいからこそ、不倫を止めずに連載に持っていこうとしているところ。俊夫と不倫が「性愛」じゃないという点も「不倫モノ」として、新しいものになったかなと思います。風吹ジュンさんは、『無能の人』(91/竹中直人監督)が好きで、当初から母親役にキャスティングしたいと考えていました。田舎町の暮らしを自分のペースで楽しんでいる感じも、いい空気感で作れたと思います。

Q:演出で特に意識した点は?

俊夫に関しては、苦しめば苦しむほど、滑稽な雰囲気になって欲しいと思っていました。本人的にはシリアスな状況になっているのに、傍から見るとその姿がおもしろく見せたいと、撮影前に柄本さんと話しました。佐和子の実家の居間で俊夫が意外な場所に座ったり、佐和子の原稿を盗み読みして驚くシーンで、柄本さんから「こうやってみたい」とお芝居を提案してくれることも多かったですね。俊夫が車で佐和子の運転する教習車を追いかけるシーンで意識したのは、アルフレッド・ヒッチコック監督の『めまい』(58)。手に汗握るというよりは、ダラダラとしたチェイスシーンを撮りたかったんです。そのほかにも、『スイミング・プール』(04/フランソワ・オゾン監督)、『ゴーン・ガール』(14/デヴィッド・フィンチャー監督)、『ノクターナル・アニマルズ』(17/トム・フォード監督)や谷崎潤一郎の小説「鍵」などを参考に、視点を操作してどう物語を動かしていくのかがよいか、重点的に考えました。マンガのネームで描かれている内容の実写パートの撮影時には、夫の俊夫に見せる顔とは違う部分、印象を覗かせてもらうことを意識し、黒木さんの声のトーンを上げ、佐和子の行動を少し積極的に見せるなどニュアンスを加えました。
俊夫と千佳のキスシーンは一転集中です。はったりを込めて大仰なカメラワークで撮影をしたかった。ブライアン・デ・パルマ監督作品のような(笑)

インタビュー6

Q:観客へのメッセージ

素晴らしいスタッフキャストの皆さんの力が合わさって、虚実入り混じるミステリアスな夫婦映画が完成しました!“佐和子”という底が知れない人間を、黒木華さんがキュートさとクールさという二面性を持って繊細に表現し、物悲しくも恐ろしくもあるキャラクターが誕生しました。そして、恐怖と嫉妬にもだえ苦しむ“俊夫”という人間を、柄本佑さんが時にカッコ良く、時にカッコ悪く、愛嬌たっぷりに演じてくれました。この漫画家夫婦の一風変わった夫婦喧嘩の行き着く先はどこなのか。ニヤニヤヒヤヒヤしながら、楽しんでご覧いただきたいです!